前回、好きな演奏としてロン・カーターの「Gypsy」を紹介しました。
プロのジャズ愛好家小川隆夫さんに「ジャズメン、ジャズを聴く」という著書があります。
来日ジャズ・ミュージシャンが他のプレイヤーの演奏を聴き、本音で論評するという嗜好の本です。
この中で、ベーシストのニールス・ヘニング・ウルステッド・べデルセン(故人)が、ロン・カーターを聴いて、
「酷い音程だ、勉強し直した方がいい」ということを言っていました。
小川隆夫さんがムッとしたかどうかは分かりませんが、「レイ・ブラウンはどうですか?」と問うと、「レイ・ブラウンも同じ傾向がある(音程が悪い)」と続けています。
この部分を読んで、腑に落ちました!
だから、ぺデルセンの演奏は、うまいけどつまらないんだ! 私には!
絶対音感音程と速弾きを、ジャズベースの優先要素だと、私は思いません。
確かに、ロン・カーターは絡みつくような、複雑なソロはしませんね。インプロがあまり得意ではないのかもしれません。
ソロになってもウォーキングみたいになる時もあります。
ただ、この人、ビートの刻み、出し入れが絶妙ですね、私は大好きです。
音程が絶対的に正確かどうかはわかりませんが、ロン・カーターは、意図的に音を揺らしていると、私には聴こえます。
スコット・ラファロ、エディ・ゴメスのようなアドリブの冴え、チャーリー・ヘイデンやゲーリー・ピーコックのような閃き、を感じさせるべーシストではありません。
しかし、ロン・カーターの演奏表現に、私は大いなる敬意を抱いています。