4月に感想を書いたパーネル・ウィタカーの小説
著者が、あとがきの中で、「自分にとって最も重要な2冊」と紹介していた本を読みました。
一冊は、ジョン・ハートの「ラスト・チャイルド」
アメリカ西部の田舎町を舞台にした、少女誘拐事件に端を発する物語。
兄弟、母親と父親、刑事たちの愛憎が渦巻いてゆく・・・
「われら闇より天を見る」の原型のような小説です。
ヒーロー(ヒロイン)の先祖が背景に居ます。少し異なる背景ですが、根は同じで、それが、彼らの原動力(小説の背骨)になっています。
同じ作家の作品を読んでいるような錯覚に陥りました。
もう一冊は、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」
この本は、読み始めてすぐに、読むのを止めようと思いました。
極めてつらい読書になると思ったからです。
しかし、この本の存在を知ってしまった以上、読まない訳にはいきません。
「舞台はおそらく近未来のアメリカで、核戦争か何かが原因で世界は破滅している」
「生き残った人間たちは飢え、無政府状態の中で、凄絶な・・・そんな死に満ちた暗澹たる終末世界を、父親と幼い息子が、ショッピングカートに荷物を積んで旅をしていく・・・」
と、訳者あとがきにあるとおりの物語です。
読みながら、私は、伊坂幸太郎の「終末のフール」を思い浮かべ、その続編のように感じていました。
「終末のフール」は、小惑星が数年後に地球に衝突することが避けられない状況、衝突を避ける手立てはない、という世界に生きる人間を描いていきます。
「差し迫った死と生きる」話です。
「ザ・ロード」の世界の壊れ方は、核戦争というよりも、小惑星(巨大隕石)の衝突により生命が滅亡していく壊れ方のように読めます。
その世界に具体的な希望はありません。でも、親子は旅を続けます。
「火をもって」「善に会いに」旅を続けます。
結末に救いがあってほしいと、私は願い、救いはあったように書いてあります。
・・・しかし、この結末は、本当の救いであったのかどうか・・・私には解りませんでした。
「終末のフール」で喉に刺さった小骨が、もう一本増えました・・・